Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~

新学期

正賢(しょうけん)学園を受験した時は、知らなかった。

中学二年の3学期に、クラス替えがあるなんて。



みんなの目を見ないように、教室の一番前にある学園訓を見つめた。




正賢学園生は、


―正しくあれ


―賢くあれ


―優しくあれ





緊張しながら席を立った。


「香田清子です」

そう言った途端に、誰かが言った。

「あ、うちのお祖母ちゃんと同じ名前!」

「うちも」

「うちの叔母さんもキヨコ」


頭に血が上った。

それ以上、何も言葉が出てこない。

「よ、よろしくお願いします」

と席に座った。

…つもりだった。


思ったよりイスを引きすぎていたらしい。



ドスンッ!



お尻がイスをかすめて、床に転がった。



気の毒そうにだけど、しっかり笑われた。

「つかみ最高」

「さすがだよ、ぶっきよこ」



不器用と清子を合わせた、あだ名。

…大嫌い。

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