ナックルカーブに恋して

この夏の甲子園で、S大桜川は予想外の快進撃を見せた。
初戦突破しただけでなく、二回戦も投打に余すことなく実力を発揮して、三回戦へと進んだ。
そして、優勝候補の呼び声高いT洋学園と互角の勝負を繰り広げた。
倉木君は初戦と変わらず安定したピッチングを続けていたが、相手は投球や守備のほんの少しの隙を突いて、得点を上げてくる。
負けじと桜川打線も食い下がり、相手のエースをマウンドから降ろすことに成功したが、あと一歩及ばなかった。

スコアは3ー5。
試合終了と共に涙こそ見せたものの、後輩たちは皆どこか清々しい表情をしていた。
一塁側のアルプスに向かって頭を下げた選手達に、スタンドからは温かい拍手と声援が送られた。

彼等の、そして、私たちの熱い夏は、こうして終わったのだ。
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