六十年後のラブレター
こくはく
「達也さんが…?」
有香は言葉を濁らせた。
話を聞いていると、達也は祖母の一番の理解者だったという想像が膨らんでいたため、何があっても祖母に同意してくれるものと思い込んでいた。
「あの頃の私は、幼かったのだと思うわ。自分が傷つかないことに精一杯で、周りが見えていなかった。」
悲しそうに言う優子を見て、有香は叫んだ。
「そんなことない!おばあちゃんが正しいよ!家族が死にに行くことにどうして喜ばなくてはいけないの?」
本気で怒る有香の姿は、これからの日本の在り方を示しているようだった。
「…。」
「…ごめん。続きを聞かせて?」
「ちょうどそのころ、私にお見合いのお話がきたの。嬉しいことよ。だけどね、喜べなかった。竹志さんには悪いけれど、私には心から愛している人がいたから。」
「竹志さんって…おじいちゃん?心から愛している人というのは…達也さんね?」
優子は優しく微笑んで、再び記憶に息づけた。