六十年後のラブレター
わかれ
肌寒い季節は寒さを増し、空には白い結晶も見える。
「優子!いつまでもボーッとしとらんと、ご飯の用意手伝ってや!」
母の怒鳴り声に、優子は開いていた本を閉じ机に伏せた。
「本読んで勉強するのもええけどなぁ、女の子なんじゃけん。」
母はぶつぶつと文句を言っていたが、その小言も、本の内容も、優子の頭には一つも入っていなかった。
あの日以来、達也とは会っていない。
いつもの場所に行っても、達也の姿はそこにはなかった。
何度考えてみても分からない。
達也は一体何を考えているのだろう。
嫌われたのかと思うと、優子の瞳には自然と涙がにじんだ。