蒼いパフュームの雑音
8.撫子色


いったい何人の女がこんなふうに眠れない夜を過ごしているのだろう。
緋色の優しさと、人懐っこい視線、そしてあの香り。


独り占めしたい気持ち。
きっと、さっきいた友衣奈も同じ気持ちだろう。


ズルイ男。



(仕事、行きたく無いな。。)

仕事をしなければ、ライブも行けないし、大好きなラパーチェにも行けない。

私は私の為に働く。



目覚めた朝はもう西に傾き、空と部屋がピンク色に染まっていた。

いつの間にか眠ってしまったが、今朝の事が夢のようで、何だか足元がふわふわとしていた。

したくない仕事も、いい事があると気分が良く、時間もスムーズに進む。


「何かいい事あったんですか?」
楓が私の顔をのぞき込んだ。

「いい事、あったかなー?」
「最近の紅さん綺麗になりましたよ?ダイヤモンド、降ってきました?」
「ふふ、そうかも。」


毎日が同じことの繰り返しだけど、とても充実していた。
好きな人が出来るってこんな感じだったんだな、と久々に気付いた。








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