蒼いパフュームの雑音


お会計をして、出口を出た所で柊に呼び止められた。

「紅っ!」

振り返るとネックレスを握りしめた柊がいた。

「なぁ、前みたいに戻ろうよ。お互いいい関係に。」

そう言われた途端、考える暇も無く私の右手は柊の左頬を思い切り叩いていた。

「柊が言ったんだよ?ちゃんと付き合おうって。なのに言った矢先から部屋に女連れ込むってどうゆうこと?前のままの関係ならこんな思いしなくて済んだのに!少しは自分の言ったことに責任持って!」

そう言い放ち、丁度来たタクシーに乗り込んだ。

バタンとドアが閉まると同時に、涙が出て来た。
一度流れた涙は止まること無く次から次へと溢れてきた。

その涙は悲しいとか寂しいとかではなく、ただ悔しかった。
所詮それくらいの女だったんだ。
私は…。
私は、自分に無理してでも、柊にとってのいい女でいたかった。

他に女が居ても、私の所へちゃんと来てくれたから。

嘘でも一番って言ってくれたから。

だからこそ、ちゃんと付き合おうって言ってくれた時は「勝った」と思った。
我慢して、恰好いい女で居たから私の元へ来てくれたんだと。

でも結局それも都合のいい女なだけ。
小さなネックレスで私を縛って、何処も行かなようにしただけ。


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