美女と不細工
第一章 俺は落ちこぼれです

「た、ただいま」
 重い足取りで玄関を開けると、
「おう、お帰り。補導されたって?」
 俺を出迎えてくれたのは今日も無意味にイケメンな俺の兄貴だ。
 まったくどうして同じ遺伝子を持ってここまで容姿に差が出るの?
 国立の大学を一番席次で入学して以降ずっと成績優秀。
 成績不振で進学も危うい弟とは全然違う出来のいい長男だ。
 背は高けぇし、顔はいいし、モテるし、聞いて驚け。
 弁護士目指してんだぞ。
 んだよ、この差。
 もはや差別だろ。
「まぁ、どうでもいいじゃん。ただの手違いだよ」
 まさか、痴漢に間違われたとか死んでも言えないのでお茶を濁す俺。
 もし、顔が不細工過ぎて痴漢だと絶世 の美少女に思われたとか言ったら兄貴はどういった反応を示すだろう。
 あきれ返ってひっくり返るだろうか。
 いや、意外にも大笑いされたりして。
「だったらいいが。お前、試験当日に補導されて大丈夫か? ただでさえ落ちる寸前なのに」
「お、落ちるとか不吉なこと言うんじゃねー!?」
 繊細な心を持つ中3生に言っていい言葉じゃねーだろ!?
 目の前にいる兄貴とは違い俺はと言うと……。
 俺だってなぁ、自殺したいほどこの顔が
 兄貴は知らんだろうが、中学に入ったとき俺が通りすぎただけで女子の反応の酷い事、酷い事……。
 明らかに避けられてたもんなぁ俺。
「そもそもなんで受けれる学校が東洋しかないんだよ。お前、本当に加賀原の子か?」
「ほっとけや!」
 ムカつくだろ?
 超ムカつくだろ?
 加賀原家。
 代々からなぜか優秀な人材を産み出した一家としてご近所では有名な家族だった。
 一流の政治家とか医者とかスポーツ選手とか。
 だが、なぜか俺だけがこんな冴えない顔で生まれてきて成績も悪くて暗い人になってしまった。

 女友達とかもいないし、男の友達だって少ない。
 期待されててコレだろ?
 そりゃ、みんなガッカリするし家族や親戚中の目が冷たいわ。
「おい、どこ行くんだ」
「うるさい!」
 階段登って正面の部屋。
 自室に入って俺はノーパソ開いて電源入れる。
 オリジナルで開発した自作OSの画面が現れて、数分後には自分でも恐ろしいスピードでキーボードを叩いていた。
 えーい、今日のこの怒りをどうしてくれる。
「決めた、今日はウィルス作ってやる」
 ま、プログラミングに関しては世界レベルだけどな。



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