美しいだけの恋じゃない
彼が何かを言う前に自分の言葉で強引に制した。


言い訳などさせたくない。


「門倉さんは女性経験が豊富だと、あれこれ面白おかしく言い立てていた人達もいましたけど、仕事はそつなくこなしていましたし、私のような要領が悪い後輩にも優しく接して下さいました」


自分でも驚くくらいに淡々と言葉を繰り出しながら、部屋の中を冷静に見渡した。


すぐにベッド脇のソファーの上に置かれている自分のコートと鞄を発見し、素早く接近する。


「でも、まさかこんな…」


そこで一瞬だけ詰まってから、意を決して続けた。


「まさかこんな、酔って前後不覚になっている女性を自宅に連れ込んで襲うような、恥知らずな事をする人だったなんて、思いもしませんでした」


そう言いつつも、心の奥底にいるもう一人の私が自嘲を漏らす。


誰かに強要された訳でもないのに、会社の集まりで、意識が無くなるほど酔いつぶれた自分だって世間的にはだらしのない人物とみなされるというのに、何を偉そうに語っているのか。


だけど今はそれを最大限に棚に上げ、私はソファーに視線を向けたまま言い放った。


「最低です。心底見損ないました。一生、許しませんからっ」


同時に荷物を手に取ると、急いで踵を返し、玄関を目指す。


「すどう!」
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