美しいだけの恋じゃない
一瞬愕然としたけれど、すぐに気持ちを切り替え、バスタオルを手早く体に巻きつける。


開き直ってその格好でバスルームを出ようと勢い良くドアを開けると、足元に、丁寧に畳まれた私の服一式が置いてあるのが見て取れた。


それを急いで引き入れ、再び洗面所へ。


まずは下着を履こうとしてその事実を思い出し、トイレットペーパーを何層にも重ねて宛がってから身に付ける。


ブラジャー、保温性のあるインナー、ストッキングとスカートとセーターまで身に付けた所で、新しいバスタオルを使い、再度、髪の水分を吸い取らせる。


洗面台にドライヤーが置いてある事に気が付いてはいたけれど、それを使用するのは大いに抵抗があった。


充分に乾いたとは言い難かったけれど、これ以上ここに留まるのも嫌だったので、もうそこで見切りをつけ、タオルは一枚目と同様、床に投げ出した状態で私はバスルームを出た。


「須藤…」


部屋に戻ると、門倉さんは普段の部屋着なのだろう、トレーナーとジーパンを身に付け、ドアから数歩の位置に所在なさげに立っていた。


先ほど私がダメにしてしまったワイシャツが、丸められてベッドの上に置いてあるのが視界に入る。


しかし、その件について謝るつもりなど毛頭なかった。


「えっと…」
「軽蔑します」
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