美しいだけの恋じゃない
「何事も、始めのうちは不安だらけだからね。主任とは自然と仲間意識が芽生えて、お互いに励ましあい、時には冗談とか言い合いながら和気藹々と仕事をこなして来た訳だけど…。あ、もちろん、業務に差し支えが出るほどふざけたりはしてなかったよ」

「分かってますよー。天下の田中さんと井上主任ですもん。仕事を疎かにする訳ないじゃないですか。ね?須藤さん」

「はい」

「そうこうしているうちにある事に気がついてさ。いついかなる時もツンケンしていて、ご機嫌ナナメがデフォルトの師岡さんだけど、私が井上主任と密に接した後に、更に当たりが強くなるな~と」

「えー?」

「それとは別に、『井上君の担当は私の方が良かったと思うんだけど』とか『優秀で頼りがいがあるなら、年下もありよね』なんて、師岡さんが発言しているのを先輩方が聞き付けて、私にコソッと報告して来たりしてさ」

「ああ~、だったらもう、それ以外に考えられないですよね」


佐藤さんは腕を組み、渋い表情でウンウンと頷いた。


「びっくりするくらいあからさまで分かりやすい人ですね」

「まぁ、前にも言ったけど、師岡さんははっきり言うタイプには強く出られない人だから。指導という名の嫉妬混じりの八つ当たりをされたのは最初の数ヶ月で、その後は比較的平和に暮らしていたんだけどね。でも、内心私の事を憎々しく思っているんだろうなっていうのは、ヒシヒシと伝わって来てたよ」
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