美しいだけの恋じゃない
「一旦納めた嫉妬の矛先が須藤さんに向いてしまったんですね…」

「そうそう。同チーム内の新入社員な訳だから、必然的に、井上主任は上司として須藤さんの事を他の社員より気にかけるだろうし、フォローする場面も多くなるもんね。でも、師岡さんにはそれがすこぶる気に入らなかったと」

「しかも今回、井上主任が須藤さんをダイレクトにかばった上に、自分がその愛しい人にやり込められる立場になってしまったから、怒りが爆発したという訳ですか」

「うん。私はそう思ってる」

「はぁ~、つくづくくっだらない!」


佐藤さんは思いっきり顔をしかめながら言葉を吐き捨てた。


「苦言を呈されても仕方のない事をしておきながら逆ギレするなんて。しかもその根底にあるのが恋愛がらみの妬み嫉みなんですもんね。ホント『何しに会社来てんだよ』って感じ。そんなのどうでも良いからちゃんと賃金に見合う働きをしろっつーの」


普段から師岡さんに対しては厳しめな佐藤さんだけれど、今日は更に嫌悪感を露に言葉を繋いだ。


「職場の人を好きになるのまでは仕方ないと思いますよ?でも、そんな個人的感情で動いちゃダメですよね。社会人としてあるまじき行為ですよ。職場に意中の相手がいるんだったらむしろ、周りにそれがバレないように、余計な精神的負担をかけないように、慎重に行動するべきだと思います」

「そうだよね。それが大人の対応だよね」
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