美しいだけの恋じゃない
佐藤さんの主張に頷いてみせてから田中さんは話を進めた。


「と、いう訳なのよ、須藤さん。だからこれからも何かしら不愉快な目に遭わされる恐れはあるかもしれない」

「でも、さっきガツンと言ってやったから、流れは変わるんじゃないですか?」


私がどう返答しようか考えあぐねている間に、若干落ち着きを取り戻した佐藤さんがそう問い掛けた。


「何度も話に出てるけど、相手に強く意見されたら萎縮するタイプですし。師岡さんて」

「んー、どうだろうねぇ。それでもやっぱり、15も年下で社会人としての経験も浅い須藤さんの事は、まだまだ甘く見てると思うんだよね」

「……勝手に格下認定してるって事ですか?」

「うん。16年も勤めてアレだし、同じ新人時代で比べたら、おそらく須藤さんの方がよっぽど優秀だとは思うんだけど、とにかく『自分は営業一課の主』っていう考えが無駄に彼女に自信を与えているんじゃないのかな」


一旦佐藤さんに合わせていた視線を再び私に移してから田中さんは続けた。


「それに、さっきのはまごうことなき言いがかりだったから堂々と反論できたけど、基本的に、やっぱり須藤さんておしとやかで控えめで『極力他人との争い事は避けたい』っていう考えが染み付いてるんじゃない?多少理不尽な事をされても『自分が我慢すれば良い』って思っちゃうというか」

「え?あ…」
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