美しいだけの恋じゃない
「ああ~、確かに。それは言えてるかも」


佐藤さんは力強く同意した。


「で、普通だったら須藤さんみたいな人を目の前にしたら『相手はこれだけきちんとしてるんだから、自分もそれに恥じない言動を心がけなければ』っていう考えになる筈なんだけど、むしろそこにつけこんで、これでもかとばかりに好き勝手に振る舞う輩も世の中には確実にいて、そして師岡さんは間違いなくそういうタイプなのよ」

「結局ずる賢い奴の方が得してしまうんですよね。奥ゆかしい人が、それ故に嫌な目に遭わされる確率が高くなるなんて、嫌な世の中ですよねー」

「昔の事件があるから、上司の目のある所であからさまなイジメはさすがにしないとは思うのよ。でも、隙あらば須藤さんを陥れようと、今まで以上に厳しく監視して来るかもしれない」


とても恐いことを、田中さんは真剣な表情で語った。


「もちろん私が出来うる限りフォローするつもりではいるけど、目の行き届かない時もあるかもしれない。とにかく、何かあったらすぐに言って」

「あ、私も僭越ながら須藤さんを守る為に尽力するよ」

「……ありがとうございます」


お二人のお心遣いに胸がジーンとした。


それと連動して目頭も熱くなる。


「だけど、何だか納得いかないわ~」


さすがに涙をお見せするのは気恥ずかしくて、必死に瞬きをして眼球の水分を捌けさせていると、佐藤さんが憮然とした表情で言葉を発した。
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