美しいだけの恋じゃない
「いや。別に男性は、身支度にそんな時間かからないし、大丈夫でしょ。上着脱いで荷物置いて来るだけだし。1、2分でイケるよね」
「頑張ります」
笑顔でそう答え、先を急ごうとした彼は、先輩方の背後にいた私と目がかち合ってしまった。
「…おはよう」
ここで無視するのは不自然だと思ったのだろう。
足を止め、お二人と温度差が出ないように顔面に笑顔を貼り付けたまま、愛想良くそう挨拶を繰り出した。
ここ一ヶ月、彼のそういった言動に合わせて、私も周りに不審感を抱かせないように無難に穏やかに、だけど『これはあなたの為ではなく他の人への配慮ですから』という胸の内を目で訴えながら対応して来たけれど。
「おはようございます」
今日の私は一味違った。
今までは口角は上げつつ、だけど瞳の奥はさぞかし冷えきっているのだろうな、というのが自覚できる笑顔を作っていたのだけれど、久しぶりに、門倉保に対して自然に微笑んでしまった。
彼が目を見張ったのが分かったけれど、私はすぐに視線を逸らし、すでに数メートル進んでいた佐藤さんと田中さんの後を追った。
また一つ、ステージが上がったな…。
足早に歩を進めながら考える。
大嫌いな相手と、心とは正反対の表情を浮かべながら、コミュニケーションが取れるまでになってしまった。
「頑張ります」
笑顔でそう答え、先を急ごうとした彼は、先輩方の背後にいた私と目がかち合ってしまった。
「…おはよう」
ここで無視するのは不自然だと思ったのだろう。
足を止め、お二人と温度差が出ないように顔面に笑顔を貼り付けたまま、愛想良くそう挨拶を繰り出した。
ここ一ヶ月、彼のそういった言動に合わせて、私も周りに不審感を抱かせないように無難に穏やかに、だけど『これはあなたの為ではなく他の人への配慮ですから』という胸の内を目で訴えながら対応して来たけれど。
「おはようございます」
今日の私は一味違った。
今までは口角は上げつつ、だけど瞳の奥はさぞかし冷えきっているのだろうな、というのが自覚できる笑顔を作っていたのだけれど、久しぶりに、門倉保に対して自然に微笑んでしまった。
彼が目を見張ったのが分かったけれど、私はすぐに視線を逸らし、すでに数メートル進んでいた佐藤さんと田中さんの後を追った。
また一つ、ステージが上がったな…。
足早に歩を進めながら考える。
大嫌いな相手と、心とは正反対の表情を浮かべながら、コミュニケーションが取れるまでになってしまった。