美しいだけの恋じゃない
これからはもう、強い風が吹いても怯んだりしない。


全身ずぶ濡れになるのなんか構わない。


言いたい事を言い切って、いつまでもしつこくネチネチと、安全な場所から好き勝手に、なんやかんやとヤジを飛ばして来る輩なんか気にせずに、私は荒れ狂う空の下、力強い足取りで歩いて行くのみ。


いつか必ず雲の切れ間から太陽が顔を覗かせ、この身を照らし、心まで温めてくれる筈だから。


「あ。そろそろ行った方が良いかな?」


するとそこで田中さんが腕時計をチラッと確認しつつ、私と佐藤さんにそう言葉を投げ掛けた。


そういえば話し込んでいる間に、女子男子共にロッカールームへの出入りが激しくなって来ている。


始業時間が迫って来たのだろう。


「ですね、行きましょうか」


佐藤さんもつられたように同じ動きをし、そう返答した所で、自然と私達はその場から歩き出した。


「おはようございます」


こちらに向かって来る人の波に逆らうようにして廊下を進み、その方達と挨拶を交わしながら営業一課を目指す。


「あ、門倉君だ」


佐藤さんがそう言葉を発するのと同時に、門倉保が進行方向にあるエレベーターから降り立つ姿が確認できた。


「おはよう、門倉君」

「おはようございます」

「結構ギリギリだよ!急げ急げ」

「はい」
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