美しいだけの恋じゃない
「んー。今までそういう類いのもの、お世話になった事がないから、何か怖くて手が出せないんですよね。別に耐えられない程ではないから我慢しちゃおうかなと思って」

「ちゃんと用量を守れば大丈夫だとは思うけど…。まぁ、本人が乗り気じゃないんだったら、無理には飲まない方が無難かな」

「はい」

「だけどそれで合点がいったわ。何か今日の佐藤さん、元気がないな~と思ってたんだよね」

「はぁー、猿も木から落ちるですよ」

「それ、ちょっと違うんじゃない?」


その後もお二人の会話は続いていたけれど、内容はもう耳に入って来なかった。


……どうして、今の今までその事実に気付かなかったんだろう。


もうすぐ今月も終わろうとしているのに。


私、まだ生理になっていない。


最後に来たのはいつだっただろうか。


必死に脳内のカレンダーを捲る。


確か年末年始のお休みが明けてすぐの頃だった。


つまり一月の上旬。


いつも通り、5日程で出血は治まった。


それが新年会の二週間ほど前で、ああいった集まりではそんなに気軽に席を立てないだろうし、ちょうどこの時期に終わって良かった、と思ったのを覚えている。


そして今は2月の下旬。


私の生理は28日周期で、毎月きちんと訪れていた。


もちろん、多少前後する事はあったけれど、せいぜい2、3日だった。
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