美しいだけの恋じゃない
「いーや違う!それはあのビジュアルありきだからよ。私が入社した当初はあんな大切に扱ってなんかもらえなかったもん」


呆れたような声音で反論した門倉保に、師岡さんはいかにも口惜しげに言葉を吐き捨てた。


以前から師岡さんは度々こんな風に、容姿が原因で今までの人生苦汁を飲まされて来たような発言をしているけれど、そういった方面で彼女に特別難があるようには見えなかった。


中肉中背で均整の取れた体格をしているし、肩より下の茶色の髪を巻いたり結ったりして毎日手のこんだアレンジを施し、メイクもトレンドを押さえたもので、私なんかよりよっぽどお洒落に気を使っている。


鼻の高さがあまりなく、目も若干小さく細いけれど、輪郭とのバランスは良いし、世の中には彫りの深い顔立ちは苦手という人もいて、そういった人達からは「和風美人」と評価される顔立ちなのではないだろうか。


彼女の言う通り『無駄にゴテゴテしている』ルックスの私からしたら、羨ましいほどのシンプルさだ。


ただ、いかんせん彼女の言動は個性が強すぎて…。


それに加え、せっかく元の素材は良くても、常日頃から眉間にシワを寄せ、口をへの字にしているせいで、とてつもなくキツく、近寄りがたい印象を周りに与えてしまっている。


つまり自分で自分の魅力を台無しにしてしまっているだけなのに、その事に気が付いていないようだ。
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