美しいだけの恋じゃない
呆けたような声を出したあと、師岡さんは突然興奮気味に言葉を発した。


「え。やだ、もしかしてあなた達、くっついたんじゃなくて、むしろソレが原因で仲違いしちゃったワケ?」


返事をしない門倉保を見て師岡さんはその推察を確信に変えたようだ。


「アハハ!こりゃますます愉快だわー!」


その言葉を裏付けるように心底楽しそうな笑い声を上げる。


「だったらどっちみち長くはここに居られないかもねー、あの子。これから毎日あんたと顔を合わせなくちゃいけないんだから。一体いつまでもつことやら」

「あんた…」

「あらやだ。何睨んでるのよ?」


師岡さんは急に口調を荒々しいものに変え、門倉保にぶつけた。


「この、レイプ犯が」


きっと彼もそうだろうけれど、私の心も凍りついた。


「私のせいにしたいみたいだけど、誰からどんな情報を仕入れようが、冷静に立ち回れば良いだけの話でしょ。『彼女の過去がどうだろうと関係ない。俺がしっかりと受け止めてみせる』なんて、無駄にはりきっちゃったりしたのかしら?でもそれ、自分の下心を綺麗事でメッキできる大義名分を手に入れて、ここぞとばかりに利用したってだけの話だから」

「そんな…」

「世間的にはそれ以外の何物でもないんだよっ」


蔑まれているのは門倉保だけれど、師岡さんには当然、彼の後ろに私の姿も見えているだろう。
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