美しいだけの恋じゃない
今までは、あちらからわざわざあれやこれやと難癖をつける為にコンタクトを取って来ていただけで、業務上で彼女と密に接する機会は基本的にはほとんどない。


私はこれから、運命の判決を待ち、そしてとても辛く苦しい決断を下さなければならなくなるかもしれないのだから。


とてもじゃないけど彼女の相手をしている余裕などない。


すべてが決着するまでは、私を蚊帳の外に放り投げておいてもらいたいものだ。


「鈴木設備工業さんから差し入れでーす」


そんな事を考えながら仕事をこなしているうちに瞬く間に午前が過ぎ、お昼を済ませて小一時間経った頃、直前まで来客の応対をしていた別チームの女性が、そう声を発しながら箱を手に各デスクを回り始めた。


どうやらお客様から頂いたお菓子を分配して下さるようだ。


「はい、どうぞー」


その女性…菅原さんが私達のチームにも近付いて来て、個包装のそれをそれぞれの席の前に置いていく。


外回り中で不在の男性陣の分ももちろん忘れない。


彼女は田中さんの4年先輩で、営業一課では二番目のベテランさんだ。


勤続年数でいえば師岡さんとさほど変わらないし同世代となる訳だけれど、雰囲気は真逆で、おっとりふんわりとしている方だった。


「わー、ありがとうございます」

「何ですか?これ」

「えーっとね、老舗の酒造メーカーと洋菓子店がコラボして作った大人のスイーツだって」
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