美しいだけの恋じゃない
菅原さんは箱の中に入っていたらしい手のひらサイズの小冊子を見ながら解説する。


「日本酒を混ぜ混んで焼いたカステラ生地で、同じくお酒入りのカスタードクリームをサンドしてるみたいよ。ホラ、こんな風に」


言いながら、そこに印刷されている写真を私達に掲げてみせた。


「うわー。おいしそう!」

「日本酒ですかー。どれどれ?」


そう言いつつ田中さんが現物を鼻に近付けた。


私と佐藤さんもつられて同じ動きをする。


途端にアルコール臭が鼻腔を刺激した。


「おおっと。袋越しでもバッチリお酒の香りがする」

「ですねー。すごい存在感」

「え。ホントに?」

「はい。普通、お菓子に使ってるアルコールって蒸発しちゃうものなんですけどね」

「あー。その日本酒ありきのお菓子だから、それが堪能できるように独自の製法で成分は壊れないようにしてある、だってさ」

「それじゃあ勤務中に食べるのはちょっとマズイですね」

「そうね。家に帰ってからじっくり味わって」

「はい」

「いただきまーす。やった!夕食後の楽しみができたぞ!」

「ありがとうございます…」

「喜んでもらえて良かった」


田中さんと佐藤さんと私の言葉に菅原さんは笑顔でそう答え、別のチームのデスクへと移動して行った。


「ん?という事は」


そこで佐藤さんはハタと気付いたように呟き、私に視線を向けた。
< 142 / 219 >

この作品をシェア

pagetop