美しいだけの恋じゃない
先ほどの私の考えをトレースしたかのようなその主張にまず驚き、そして最後の言葉にさらに鼓動がはね上がった。


「あ、あの」


思わず衝動的に発言する。


「私、思い出した事があって…」

『え?』

「あの夜…」


医務室では聞けなかったあのこと。


「もしかしたら私、あなたに対して、『好き』だなんて、口走っていたのではないですか?」


かなり間を置いてから、門倉保は返答した。


『…うん』

「!どうして黙っていたんですか!?」

『いや…。だって、そんなの何の免罪符にもならないし』


若干戸惑い気味に彼は言葉を繋いだ。


『君の中ではあくまでもあれは、『先輩として好意を持っている』っていう意味合いだったんだろ?』

「え?あ…」

『しかもあんな酔った状態で紡がれた言葉だし。それを自分の都合の良いように解釈して、当の本人にきちんと意志確認をしないまま手を出してしまうなんて、やっぱ最低最悪だよ。何の申し開きもできない』


何かを言いたいような気がするのだけれど、だけどその言葉の影さえ見当たらなくて。


『だけどごめん。あの時は…。好きっていう言葉に過剰反応して、年甲斐もなく浮かれて、理性の歯止めが利かなくなってしまった。俺もあの時、ほろ酔い気分だったから…』


私が一人で勝手にもどかしい思いを募らせている間に、門倉保は粛々と話を進めた。
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