美しいだけの恋じゃない
「といっても、短大卒業後に入社して5、6年経つらしいから、実年齢はさほど若いっていう訳でもないのよ」

「えっ。そうなんですか?じゃあ門倉君よりも年上じゃないですか。20代半ばであのノリか…」


田中さんが佐藤さんとやり取りを始めた所で私は自分の世界に入り込んだ。


確かにちょっとたどたどしく、怪しい敬語が散りばめられたトークではあったけれど、相手はお客様だし、そこは別にそんなには気にならなかった。


だけどどうしてだろう。


何かが心の中に引っ掛かかりまくっていて、この上なく気分がモヤモヤする。


大いに首を傾げつつも、とりあえず約束した事を果たそうと、再び受話器を取り、門倉保の仕事用のケータイに架電した。


留守電へと切り替わったので、先程の件を吹き込み電話を切る。


引き続き通常業務をこなしているうちに小一時間経過し、そろそろ茶器を洗いに行こうかなと考えている所で門倉保が帰社した。


「ただいま戻りました」

「あ、門倉君お帰り」

「お疲れ様ー」

「お疲れ様です。あの、門倉さん」


田中さん達に続いて出迎えの言葉を述べてから私は問い掛けた。


「留守電はお聞きになりましたか?」

「あ、うん。高幡技建さんでしょ?移動中に電話したよ」


スーツケースを足元に置き、椅子に腰掛けながら彼は返答した。
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