美しいだけの恋じゃない
目を開けると、予想した通りの人物が、私を組み敷いた体勢でこちらを見下ろしていた。


「こんな中途半端な所で、止められる訳ないから…」


乱れて額にかかった前髪をかきあげ、普段は上がり気味の切れ長の瞳を眉毛と連動させて下げながら、心底辛そうにそう呟くと、彼は私の体に改めて覆い被さった。


そこで私はその事実に気付き、さらに打ちのめされる。


全身に広がる、肌と肌が直に触れ合う感触。


お互いに一糸纏わぬ姿でベッドに横たわっているという事が如実に分かる。


そして先ほどからずっと、下腹部に感じているこの違和感は…。


生まれて初めての行為だけれど、私はもう、その意味が分からぬ程の子供ではなかった。


心も体もフリーズしてしまった私の額に、まるで幼子をあやすかのように唇を一度押し当ててから、彼は続けた。


「優しく動くから…。ね?」

「え…。そ、待っ…」
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