美しいだけの恋じゃない
「俺の罪は一生、消える事はないだろう。もし、須藤が周りに事実が露呈しても良い、どうしても俺に法的な罰を与えないと気が済まないというのなら、訴えてくれても構わない」


適度に高く、柔らかな稜線を描く鼻筋。


上下共に厚すぎず、薄すぎず、他のパーツとの調和も完璧な、控えめな艶めきを持つ唇。


前は常に口角が上がっていたのだけれど、ここ最近は、私の前ではこんな風に、下降線を描いている事の方が多い。


そしてその顔面を縁取っている、健康的な輝きを放つ、左分けのサラサラの黒髪。


この上なく憧れていた。


無駄な派手さはなく、パーツの一つ一つが上品でとても美しいその顔立ちと、和の象徴である漆黒の髪に。


私が昔から、手に入れたいと願う物ばかりだったから。


「俺の話っていうのはこれだけ。電話やメールじゃなくて、直接言っておきたかったんだ」


何故か彼を事細かに観察してしまっている間に、話はまとめに入っていた。


「もう、こうして君を呼び出して、二人きりになる事もないから安心して」


私は何も言えなかった。


「それじゃ……さよなら」


言葉の途中で彼は足早に歩き出し、私の脇をすり抜ける。


これからもしばらくの間は一緒に仕事をして行く筈なのに、まるで永遠の別れのようなトーンで挨拶を口にして。


彼は私の前から立ち去ろうとしている。
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