美しいだけの恋じゃない
そのような莫大な利益を生む契約をコンスタントに交わし、トラブルなく納品し、終了させ、それらの実績が評価されて更に顧客が増えるという良い流れが出来上がっていた。


なのでここ20年ばかり、五十嵐パイプの業績は緩やかに右肩上がりらしい。


商業経済の知識などないけれど、社員一丸となって、このまま真摯な姿勢で粛々と仕事を継続して行けば、五十嵐パイプが倒産するという事はまずないだろう。


つまり社員が解雇を言い渡されるような公序良俗に反する振る舞いをしたり、自ら辞表を提出したりしない限り、定年まで勤め上げられる筈なのである。


門倉保一人の為に、これほどの優良企業から、私にとっての楽園から逃げ出すなんて、そんなのバカげている。


だから私は意地でもここに居座り続ける。


彼とは徹底的にビジネスライクな関係を貫き通し、私は私のやるべき事をやって行けば良い。


それに、もしかしたら門倉保の方は異動願いを出すつもりかもしれないし。


今年4月の人事異動は時機的に見送るとして、更に社会人としてスキルアップできているであろう来年あたりに。


現東京本社の営業部長、つまり私達の上司は、あえて売上高がイマイチだった営業所を転々と渡り歩き、すべて上向きにさせて最終的にここにたどり着いたという武勇伝の持ち主だった。


門倉保は、そんな部長の行動力、手腕に、かなり感銘を受けているようだ。
< 49 / 219 >

この作品をシェア

pagetop