美しいだけの恋じゃない
そしておそらく、ライバル心も芽生えているのではないかと思う。


明るく如才なく、「営業マンになるべくしてなった男」と評される門倉保は自分自身もそれを自負しているようで、その分野で多大なる功績を収めた部長をリスペクトしつつ、ぜひとも越えてみたい、という願望を抱いている事がヒシヒシと伝わって来る。


実際に「俺もチャレンジしてみようかなーと思ってて」「まずはしっかりとノウハウを叩き込んで…」などと先輩社員との会話で発言しているのを耳にした事がある。


彼ほどの対人スキルの持ち主なら、新しい環境での人間関係の構築なんかあっさりとやり遂げるだろう。


そもそも彼の中ではそんな事問題にすらしていないかもしれない。


そういった経緯と、そして新たに加わった事情により、彼が異動を希望する線はさらに濃厚になって来た。


「新たに加わった事情」とは言わずもがなで、私との今回のトラブルだ。


おそらく彼にとっては、恋愛感情のない女性と一晩過ごすのなんかさほど大事ではなく、ああいった行為はあくまでもスポーツと同等のストレス解消法で、今まではその考えに同調する相手ばかりだったのだろう。


自分の体を安売りするような女性がいるなんて、とても信じがたいし、その倫理観にとてもじゃないけど共感などできないけれど、門倉保の言動を見る限り間違いなくそういう人物は存在するのだろうと思う。
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