美しいだけの恋じゃない
そして必死になって探しあてなくても、『類は友を呼ぶ』で、そういった男女はお互いに自然と引き合うのではないだろうか。


だからすっかりそれに慣れきっていて、感覚が麻痺していた彼は、うっかり同意を得ないままに、目の前で酔い潰れている私に手を出してしまった。


きっと事後承諾でも問題はないと、たかをくくっていたのかもしれない。


まさかここまで恨まれる羽目になるとは、彼にとっては予想外で計算外だった筈。


末代まで呪いそうな勢いの私にきっとドン引きしているだろうし、そんな陰気で面倒臭い女の元からはさっさと逃げ出そうと考えてもおかしくはない。


そうなれば、むしろ好都合だ。


私の方だって、怒りの対象と週に5日も顔を合わせ、何時間も関わり続けなくちゃいけないのは尋常ではないストレスなのだから。


そんな性的にだらしなくてふしだらで恥知らずな男、さっさと目の前からいなくなって欲しい。


……だから私はもっと、彼に嫌われなければ。


とことん嫌われて、仕事上でも関わらなくて済むような流れに持って行かなければ。


そんな決意を抱きながら更衣室で身支度を済ませ、室内に居る方々に「お先に失礼します」と声をかけながら部屋を出る。


エレベーターホールへと向かい、箱に乗り込み、一階に着いてから、ふと思い立ち、玄関ではなく反対方向にある社食に向かって歩き出した。
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