美しいだけの恋じゃない
「来月から新サービスが始まるので、それに対応したサイズ、素材、デザインで作り直すらしいですよ。かといって有料だった旧包装資材を破棄するのはもったいないですからね。在庫が無くなるまでは使用許可が出ています」

「え」

「新規格の袋は来月頭に届くそうですから。万が一、その前に旧式の物がすべて捌けてしまったら、社名入りのA4封筒で代用して下さい」

「あ、あら。そうだったの」


ひきつった笑顔で主任に答えてから、師岡さんは、私には鋭い視線を向けつつ話を進めた。


「それならそうと、あなたがきちんと皆に周知しておかなくちゃいけないんじゃないの?入社してもうそろそろ丸一年経つんだから、誰に言われなくても自分からどんどん動いて…」
「いや、その件はもう一月以上も前に、庶務課から全社員に向けてメールで通達されていますよ?」


彼女の言い分を途中で遮るようにして井上主任は言葉を発した。


「その翌日、ミーティングでも部長が念を押していましたし。師岡さん、記憶にありませんか?」


その問い掛けに彼女は固まった。


「ちょっと落ち着きましょう」


あくまでも穏やかに、主任は師岡さんに語りかけた。


「業務上、何か気になる事柄があったとして、それを確認する際に、いきなり喧嘩腰になる必要はないと思いませんか?」


視線もしっかりと彼女の瞳を捉えている。
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