奇聞録九巡目
蔓延した正体不明のウイルスに、町は冒された。
死人にハエがたかり、異臭が鼻を突く。
体内で爆発的に増えるウイルスは、三時間で人の命を奪う。
勿論抵抗薬剤は無い。
ただ、座して死を待つのみの悪魔のウイルス。
感染力は凄まじく、瞬く間にこの町を飲み込んだ。
世界は終焉を迎え、生命は一掃されるのだろう。
人の手を離れた機械達は活動を止め、暴走し、何万年もの汚染を併発し、草木も生えない土壌を作り上げる。
およそ、肉体から離れた魂は行き場を失い、埃や砂や土に埋もれてその場に止まる。
死神もやることがなくなり絶えて、神聖とされる畏敬の対象は、忘れられて朽ちていく。
そして、何も無くなる。
大気以外、静寂が包む星になる。
人とは何なのか・・・。
朝日を浴びて目を覚ました。
良い天気の朝、青空には一筋の飛行機雲。
爆弾ではない何かを飛行機が投下したのが見えた。