鬼社長のお気に入り!?
 まるでダダをこねている子供のような私を、八神さんは困った顔で見下ろした。そんな視線にますますいたたまれなくなる。


「あのなぁ、だいたいお前は――」


「あ! いたいた! もう! 走るの早すぎるんだから」


 八神さんの背後から声がして、見るとそこには昨日の女性が息せき切って階段を駆け上がってきたところだった。


「加奈子、車の中で待ってろって言っただろ」


「だって、もしかしたら私のせいでなにか勘違いさせちゃったかと思って……」


 勘違い……? なんのこと? 別に私は勘違いするようなことしてない……よね――?


「昨日紹介するって言った途端に猛ダッシュで逃げるからわけわかんなくなるんだ。こいつは俺の妹で加奈子だ」


「あの、ご挨拶遅れました。飯田加奈子です……先日はご親切に傘を貸していただいて、助かりました」


 ぺこりと頭を下げると、ストレートのくせのない八神さんに似た黒髪がパサっと肩から雪崩る。
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