鬼社長のお気に入り!?
「そんなこと知るか、こいつが拾ってしまってたんなら俺が気が付くわけないだろ。俺の車に乗ったのはお前を空港まで迎えに行った時だから、その時にでも落としたんだろ」


「うーん、落とした覚えはないんだけど……でも見つかってよかった! 失くしたなんて言ったら和彦さんに怒られちゃう」


「社長なんだからいくらでも買ってもらえ」


「もう! そいうわけにもいかないの!」


 もしもーし? あのー……私の存在忘れてませんか……?


 それにしても加奈子さん、ってこんな雰囲気の子だったかな――?


「とにかくありがとう! 杉野さんの誤解も解けたみたいだし」


「え? 誤解?」


「じゃあ、また」


 そう言って加奈子さんはにこりと笑うと長い髪を翻して人ごみへ消えていった。


「ったく、馬鹿の勘違いもいい加減にしろ。こんな人前でピーピー泣きやがってみっともないヤツ」


「うぅ……」


 そんな冷たいこと言わなくったっていいじゃないのさぁ。


 私はバッグの中からティッシュを取り出すと思い切り鼻をかんだ。


「お前に話がある。ついてこい」


 突然の八神さんの登場により、私の一時帰省が強制的にキャンセルされた。やっぱり親になにも言わなくて正解だった。


 私は八神さんに言われるがまま車に乗って、どこへ行くのか想像もつかないままただぼんやりと窓の外を見つめていた。
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