鬼社長のお気に入り!?
「どうして八神さんは私に話してくれたんですか? 八神さんの過去のこと」


「さぁな、お前になら話してもいいって気になっただけだ」


 え? じゃ、じゃあ、もしかして八神さんに一歩近づけたってことかな? お前にならって言ったもんね、お前にならって――。


「お前、なにニヤニヤしてんだ? あのカップル見てなにか想像してただろ?」


「え……?」


 言われて気が付くと、視線の先で若いカップルがイチャイチャしながら情熱的なキスを交わしていた。


「ち、ちちち違いますっ!! 誤解ですってばっ」


「シッ! 声がでかいんだよ馬鹿」


「……すみません」


 つい八神さんに煽られて興奮してしまった。だって、あのキス見てたらなんでかわからないけど八神さんとキスした時のこと思い出しちゃったから――。


「あぁ、お前の唇も案外柔らかかったよな」


「■※▲♯~~!」


 くぅぅ~、八神さん、絶対私の反応みて楽しんでるよね……。


「八神さん、ひとこと言っていいですか?」


「なんだよ?」


「馬鹿」


「なっ……」


 まさか私から「馬鹿」なんて言われるなんて思ってなかったに違いない。八神さんの意表を突かれた顔がおかしくて私はくすくすと笑ってしまった。
< 279 / 367 >

この作品をシェア

pagetop