鬼社長のお気に入り!?
 クリスマスというイベントが過ぎれば今年も終わる。


 しかし、顔なじみの牧師から「クリスマス限定で教会の外観にイルミネーションをデザインして欲しい」と頼まれた。このクソ忙しい時に何言ってんだと思ったが、俺はとあることを思いついた。はっきり言ってイルミネーションデザインは俺の専門外だ。けれど、イルミネーションに興味がありそうな杉野に自分がデザインしたイルミネーションを見せてやりたくなったのだ。そして、忙殺される毎日を送っていたら、人の気も知らないで杉野は桐生電機の新作発表会に行くと言い出した。


 なんであんなところの発表会なんて行くんだと正直ムカついた。まだ桐生電機に未練があるのでは?とさえ勘ぐってしまった。そこで彼女に「会社を潰したって、きっと八神さんの気は晴れない」と言われてつい怒鳴ってしまった。


 俺の気が晴れなかったら、今までやってきたことはいったいなんだったというのか、桐生電機を潰すためにやってきた事は無駄だというのか、けれど彼女の気持ちも理解できなくはなかった。


 わかっている。きっと桐生電機を倒産に追い込んだところで残るのはきっと虚無感だろう。目的が達成されてしまえば、モチベーションがなくなってしまう。


 俺はやりきれない思いを抑えられずに彼女を力いっぱい抱きしめてしまった。そして、まるであがき苦しむ俺を助けてくれと言わんばかりに彼女の唇を貪った。


 彼女の唇はそんな棘だけの俺の心を和らげてくれた。優しくて、柔らかくて気持ちが落ち着いていく。


 甘えん坊もいい加減にしろ。もうひとりの俺が呆れてそう言っているような気がした。


 彼女を愛している。


 日に日に想いが募る。


 けれど、今はそれを伝える時ではない。


 そう思うと、俺はただ彼女を抱きしめることしかできなかった。
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