鬼社長のお気に入り!?
「そういえば終盤でさ、多分どっかの企業関係者だと思うんだけど、ものすごく事細かに商品について聞いてくる男がいてさ、もう一度商品の説明する羽目になっちゃって大変だったよ」


「それって……あ、いえ、なんでもないです」


 メガネをかけたジェントルマン風の人ですか――?


 そう言いかけてやめた。「私もその人に商品説明しました」なんて言ったら二度手間させたと気を悪くするかも知れない。


「色々突っ込まれてちょっと返答に困ったところもあったけど、なんとかなったよ」


「そうですか、桐生さんは元々お話上手ですから、どんな質問でも的確に答えられると思います」


「あはは、照れるからやめてくれって。じゃあ、僕はちょっとまだ話しをしなきゃならない人たちがいるから、悪いけど後片付けよろしくね」


 私が「わかりました」と見送ると、桐生さんは私の肩をぽんっと軽く叩いてその場を後にした。「はぁ」とため息をついて叩かれた肩に手を当てると、そこにはまだ桐生さんの手の感覚が残っているような気がした。
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