1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 気づけばそんな言葉が口から出ていた。思わず口を覆うが、はっきりと神野くんには聞こえていて、目を見開いて私を見つめてきている。

「なんで、ハルが…」

「…悪い。…施設長がお前を心配している。それで、聞いた」

「…どこまで?」

「何も。ただ、たいようの家にいたことだけ」

 私の言ったことに、神野くんは少し安心したように息を吐いた。

 そんなに聞いてほしくないことなんですね…。

 神野くんにとって、施設にいたことは辛いことなのかもしれない。
 でも、あの写真の笑顔は無理に笑っている顔には思えませんでした。

 なら、神野くんはどうして…。

「…ごめん。帰るわ」

「アキ…秋空くん?」

「…ハルには、知ってほしくない。俺の大事な奴にしか、教えたくないんだ」

 ズキッと心の奥が傷んだ。その痛みは一瞬だったはずなのに、やけに響く。

 なんで、今、傷ついたの…?

「…わかった。悪かったな」

「…じゃ、また」

 神野くんは背を向けて去って行きました。その後ろ姿は寂しげで、今にも崩れてしまいそう。

 …神野くんは一体なにを抱えているんですか。
 どうして、そんなに寂しそうなんですか。

 分からない。でも、知りたい…。

 自分の中に生まれた感情がわからない。
 でも、悲しいって思ったのは確かでした…。
< 150 / 313 >

この作品をシェア

pagetop