ホクロ
「唇じゃないんですか」


彼は驚いた風もなく、表情一つ変えずに言った。


「ボクの何がいいんですか」


「富岡さんのツレナイところ」


ふんっと彼は鼻で笑って腕を組んだ。


「伊川さんは変わっていますね」


「富岡さんほどじゃないです」


一瞬沈黙が下りる。



「降りないんですか」


「降りますよ。富岡さんがキスしてくれたら」


彼はまた私の方に目を向けた。


「どこにしてほしいですか」


「唇」


「なんでさっきしなかったんですか」


「富岡さんのホクロがかわいかったから」


「ボクの、ホクロですか。意味が分かりませんね」


彼は右手の人差し指で唇のすぐ上にある例のホクロに触れた。


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