ホクロ
合宿の帰りは、くじ引きでたまたま彼の車に割り振られた。


彼は、大学の前で解散した後、電車通の私を駅まで送ると言ってくれた。


彼の家は駅とは真逆のはずなのに、大した距離じゃないと言った。


彼は優しいのだ。


4人乗りの黒い軽自動車。


私は助手席に乗せてもらってひとり心が浮ついていた。


後部座席のふたりは序盤で眠りに入ってしまったようで、完全に富岡さんと私の世界だった。


今までにない彼との距離感にドキドキした。


時折彼を盗み見ては心の中ではしゃぎ、他愛もない会話に気持ちが弾んだ。


昨夜のように、彼はまた私の知らないことをたくさん教えてくれた。


「伊川さんは何にも知らないんですね」


「富岡さんが物知りすぎるんです」


小馬鹿にされているような気がしたが、悪い気はしなかった。


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