回り道でアイス
「……っ!」
唇が手に触れた。
何の躊躇いもなく指についた甘い雫を吸いとられ、全身の力が抜けそうになる。多分自分だけで持っていたらアイスは間違いなく落としていたはずだ。被された手のお陰でそれは許されなかったけれど。
握られた手首の下でドクドクと脈打っているのが自分でも分かった。この早鐘のような鼓動は絶対相手にも伝わっている。唇の触れた箇所がやけに熱い。絶えず聞こえていたはずの野球部の練習の音も聞こえない。
「……甘い」
ペロリと唇を舐めて笑う。
その仕草から目が離せない。
「広瀬サン、真っ赤」
自分でも分かっているから言わないで欲しい。でも自覚していようが指摘されようが急に熱を冷ます事なんて出来ない。
「ゴチ。美味かった。溶けるから早く食べ切った方がいいよ?」
そっと手を放され、自分の手とアイスが金網の向こうから戻って来た。同時に耳を支配していた鼓動の音が少し治まり、周囲の雑音が戻って来る。