君の残り香、俺の残り火

prologue

「ッよし、これで最後だな。」
初めて経験する東京の夏。
実家だと夜風が吹いて気持ちよかったのだがやはりこちらは暑い。
現在の時刻は22時35分。
仕事が終わり、一度急いでアパートへ帰宅する。

鍵を開けて準備してあったスーツケースをとり今度は急いで鍵を閉める。
「戸締まりOK、スマホ持ったし財布持ったしカバンの中身も多分大丈夫だな…。」
そして、深夜の高速バスに乗るために練馬市役所前のバス乗り場へ向かう。

アパートを出たときは小雨だったが傘を持ってきてよかった、生憎の豪雨だ。
雨の中待つこと数十分、雨で遅れていたバスがやっと到着した。

俺の心の中には高揚と不安があった。
二つの感情は共存出来ずに暴れまわって、俺の意識をぐちゃぐちゃにしてくる…。
これから学生時代のクラスメイトと同窓会で、久し振りの友人たちとの再会は楽しみなことではある。
だが、グループトークで出欠をとった時、あいつも参加すると言っていたことがどうにも頭から離れない。
もう終わった恋で、意識しないと決めたはずだったのに…。

俺は真っ暗なバスの中で揺られながら胸を締め付けられるような感覚になっていた。
あの頃の二人楽しく幸せだった時の記憶に、縋るように意識の手を伸ばした---・・・。
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