柴犬主任の可愛い人
 
 
「お盆休み、予定が空いてたらバーベキューに行かないか?」


バーベキューと聞き、先々週あった会社主催のそれを思い出し、とても嫌な気持ちになった。慌ててその表情の弁解をする。


「もうねっ、亮さん。黒焦げのお肉ばっかりだし飲み物ぬるかったしじとじと暑くて疲れて疲れて……おまけに、知らない人がしつこく絡んでくるし」


「大丈夫だったのか?」


「はい。知らないといっても同じ会社ですし危ないことには。私には要らない勧誘だっただけです。――だからねっ、亮さん。つまりは私の苦虫噛み潰した顔の原因はそこであって!」


一重が細められ、亮さんの誤解も解ける。そうして、先程のやっちまった感も剥がれ落ちてくれた様子。その突然のお誘いの経緯に、途中だった食事の再開を促されながら耳を傾けた。


亮さん一家と友達の男の人、とその友達。こちら全員は面識があるらしい。そして、その男性陣の誰だかが親交を深めたい女の人とその友達。数珠繋ぎのメンバーでそれは行われる予定だったそう。女性陣側にファミリーもいたため、亮さん一家も加わることになったらしい。


「子ども混じってたほうが合コンだと警戒されにくいのと、道具一式と、俺が調理することをあてにされてた。嫌じゃないけどな」


「お疲れさまです」


「中止になっちゃったんだけどね」


一度近くにあるご自宅に行っていた華さんが戻ってきた。今日は娘さんが風邪をひいたみたいで。亮さんのお母さんが同居で看病してくれてるらしいけど、華さんの顔を見たら安心するよね、娘さんも。


「大丈夫でしたか?」


「ありがとう。もう熱もなくて元気だったわ」


「良かった~」


亮さんの表情も緩む。目に入れても痛くなさげな可愛い、柴主任いわく、どこかの事務所に在籍すれば即オファーが殺到するらしい、亮さんと華さんの天使な娘さんを、いつか物陰からでいいので見てみたいものだ。


中止になったらしい真夏の合コンバーベキュー……なんだか、色々と暑苦しそうなものを想像したら頭が痒くなった。


< 33 / 149 >

この作品をシェア

pagetop