特ダネには真実を
秀滝は真顔だが、その声には寂しさが含まれているように潮には聞こえた。



「…………………はぁ。」



短く溜め息をつくと、観念したかのように脱力して椅子に座った。



「莪椡渠瑛って知ってます?」


「知ってるもなにも、元県議会議員だろ?横領疑惑で心中したあの。俺の先輩刑事が担当で、良く聞かされた。」


「結構な話題になりましたもんね。俺、当時中学生でしたけど、印象は強かったです。」



「そういえば、秀滝。取材に行ってなかったっけ?」


「ああ。警察担当になりたてで、右も左も分からないまま、がむしゃらにしてた記憶がある。マスコミもかなりの数だったな。」



「そうね。うちでも、長い期間取り上げたわ。横領疑惑に心中で、国民の感心も高かったし。」


「そうなんですか。僕、その頃はテレビばっかりでしたけど、テレビでも凄かったですよね。ニュース以外にも、連日放送されてましたもんね。」



上から薇晋と崇厩、囃噺と秀滝、啄梔と幄倍である。



意見は様々だが、皆一様に覚えているようだ。


県だけでなく、国をも騒がせたあの惨劇を。
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