特ダネには真実を
その代わりに。



「南能、これ持っとけ。」


「何ですか、これ?」



秀滝から手渡されたのは、手のひらサイズの小さな容器。



「催涙スプレーだ。」


「何で今更?ってか、催涙スプレーなんて何で持ってるんですか?」



「刑事事件はそっちと違って結構危ないんだよ。今日もこれに助けられたんだ。」



思っていたのと違う抵抗をされて驚いたのか、ヘルメット越しでも視界を汚した催涙スプレーは効いた。


秀滝はその隙をついて離れることが出来、かすり傷程度で済んだのだ。



「変質者に怯える女子高生みたいですね。」


「悪かったな。」



「拗ねないでくださいよー。ありがたく貰ってあげますよ。先人の知恵は素直に受け取っとかないと、ですよね。」


「馬鹿にしてるだろ。」



「してませんよー。」



潮は否定するが、その顔と態度をみればそれが嘘であることはすぐに分かった。


しかし。



「ありがとうございます。凄く心強いです。」



なんて笑うものだから。


いつも通り……とまではいかないのだろうが、ふざけた言動が出来ているのなら一安心と秀滝は思うのだった。
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