横顔だけじゃ、足りなくて


俺も同じように先輩の横に座った。


髪は綺麗な黒で胸元まで伸びている…



『一緒に回る子いねーの?』


「うん。
まず、友達なんて1人もいないから」




そう笑った先輩…

保健室登校っていう言葉を耳にしたことがあった。

本当にいるんだな。




『そっか。
名前は?
俺は那雲』


「和奏」



わかな

そう言ってまた黙り込んだ。

こんなことして今日1日…いや毎日こうして学校を終えているのか?




『外、行こうぜ!』


「えっ!?でも…」


『いいから!
どうせ俺も回るやついねーから』




先輩の腕を引っ張り、静かな廊下を飛び出した。


おどおどして、辺りをキョロキョロする先輩。


そんな先輩の腕を引いて、適当にベビーカステラを一つ買って食べる。




『うま!ほら』




困った顔をしてベビーカステラを一つ口に入れた先輩は、さっきとは違って初めて笑顔を見せた。


なんだ、笑えんじゃん!




「何あれー」

「なになに!?」

「あの子だよ同じクラスの」

「あー!保健室登校の子だ」

「ずっと一人でいて何にも喋らないのに、男いたんだねー」




先輩の横を通り過ぎたクラスメイトらしい女たちの声…


また先輩の顔が曇ってしまった…


なんだよあれ!

いくら何でも…




「ねっ?
友達なんていないの」




そう笑った先輩は、俺の腕を引いて歩き出した。


なんで笑えんだよ…

辛そうに笑うなよ…

楽しい時だけ笑えよ。




「那雲くん、ごめんね?」




そう言った先輩の目には、薄ら涙が見えた。



この時はまだ何も知らなかった…


先輩がアイツを好きだったなんて…




-那雲 side end-



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