O♡L
あたしはバッグから鏡を出して見てみると、…それはひどいものだった。


涙でアイラインは伸びて、マスカラは黒のダマになって、頬にゴマのように付いている。

…こんな顔じゃ、電車は乗れない。


「タクシーで…帰ります」

「おう。その方がいいぞー」

あたしの頭にぽんぽんと、課長は大きな手を乗せる。


「明日、遅刻すんなよ」

「…はいっ」

「おやすみ、小稲」
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