bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
ふと隣の本郷主任をみると、主任は相変わらずウーロン茶を少しずつ飲んでいた。
「今日も飲まないんですか?」
「俺、車だから」
本郷主任はこうやって飲み会する時にはいつもノンアルコールだ。
上司なのに、部下が酔っぱらうと家まで車で送ってくれることも多い。
飲めない訳じゃないのに、こうやって皆が楽しく気を遣わずに飲めるように気配りしてくれるところはいくら苦手だと言っても尊敬する。
それに、仕事から離れると仕事の鬼じゃなくなるから、ずいぶん話しかけやすくなる。
といっても、緊張するのに変わりはないのだけれど、アルコールが入ればそれもほとんどないに等しくなる。
いつものように意地悪な笑顔で嫌味を言われながら、
「最近、どうなんだよ。お前」
急にそう言って、話しかけられる。
「どうなんだよって恋愛ですか?彼氏なんて出来ませんよ~。だって仕事か、本郷主任たちと飲んでばっかりじゃないですか」
こんな場所で、こんなシチュエーションでしか言えない嫌味で返事をする。
「どのくらい経った?別れて。」
そう尋ねられて、やっと塞ぎかけていた心の傷がまた痛んだ。