bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


「今日は、最初だからメンバーにこの企画の説明だけします」


部長が最初にそう言って始まった第1回目のミーティングは、結局終業時刻をとっくに過ぎた20時のことだった。



先輩たちが出て行ったあとの会議室で使用したプロジェクターやコーヒーの片づけを1人でしていたら、最後に残っていた本郷主任が自分のノートパソコンを片付け終わり、私の後ろにある会議室の出入り口に向かって歩いてきた。


「本郷主任、お疲れ様でした」


小さくお辞儀をしながら言うと、本郷主任は私の後ろを通り過ぎようとしてが、私の後ろでふと止まって耳元で囁いた。


「お前、俺に感謝しろよ」

「えっ!!何のことですか?」


思い当たる節がなくて、思わず声を挙げてしまった。


私の声に驚いたのか、本郷主任は柔らかそうなパーマをかけた髪の毛を掻いている。

「安藤!!お前がこの間、唯野さんと仕事がしたいって言っただろう!!!」


少し小声で怒る本郷主任は、怒りながらも意地悪そうに口角を上げながら笑っているようだ。


「はい、ありがとうございます」


そう小さくお礼を言おうとするのとほぼ同時に、本郷主任は

「お疲れ」

そう言って持っていた書類を振りながら、会議室を出て行った。
 
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