bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
 
8時を過ぎたあたりから、社員の出社ラッシュが始まる。

フロアの席が徐々に埋まっていき、賑やかになってくる。
 

時計が8時30分になる。

私にとって、毎日のささやかな楽しみの時間だ。
 

「おはようございます」


どこかのアイドルにも似ている顔立ちやスタイルで、海外の有名ブランドのスーツを綺麗に着こなした、少し長い前髪の奥に、黒々とした大きな瞳が印象的なもう一人の主任、企画チーム主任、唯野駿介主任が社員と笑顔で挨拶を交わしながら颯爽と出社してくる。
 


入口から遠い私の席からは、きっと声すら届かないが一応少し高めの声で

「おはようございます」

そう返して、会釈する。
 
企画チームの主任である唯野主任は、大学卒業後に新卒で入社し、仕事が出来ることはもちろんのこと、その真面目さと、とにかく優しくて人当たりがよく、32歳ながら異例の出世コースを進んでいる。

そしてこれに、超イケメンの独身というハイスペックで、うちの会社の女子社員人気ナンバーワンだ。


もちろん、私もその中の1人なのだけど…。
 
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