bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

 朝礼の間、背が低い部長は、本郷主任と唯野主任の間に立つと、捕まってしまった宇宙人に見えてしまい、私は毎回笑いを堪えるのに必死になる。


社内では、2人の主任は「二大イケメン」と呼ばれ、女子社員から人気がある一方で、定年が迫る部長の後釜はどちらかということが話題になることがよくある。


私にとって今は、そんなことはどうでもいい話で、この笑いを堪える為、資料を盗み見たり、時計を確認したりと意識的に上司へ焦点を合わさない努力をする。


ふと、前方から視線を感じると、本郷主任がこちらを見ていた。


しかも、睨んでいるから私の背筋が瞬時に凍る。

「やばっ。絶対怒られる」

そう呟いて、下を向いたまま朝礼を終えた。

 
今日は月曜日だったから、朝から溜まっていた仕事も多くて、部署内は皆がバタバタしていた。


本郷主任も会議を掛け持ちしていたようで、幸いなことに、呼び出されることもなく過ぎて行った。
 
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