僕を愛した罪







宮口が部屋を出て行ったのを見計らい、
部屋を抜け出そうと試みた。

だけど庭に出てみても、待っているのは有刺鉄線で。

出られなくて策ばかり考えて、結局宮口に捕まって。






『坊ちゃま。いけませんよ?
そんなことをしていたら、旦那様に怒られますよ』


『……俺も、クラスメイトみたいに、遊びたい』


『いけません、坊ちゃま。
坊ちゃまは、旦那様の息子様なのですから。

他の生徒と同じよう過ごしてはいけませんよ。

それに坊ちゃま、言われていますでしょう?

ご自分のことは“僕”と言いなさい。
そして常に敬語をお使いになられるよう、言われていますでしょう?

旦那様の言うことを、お守りください。坊ちゃま』





あの男は成績面だけでなく、口調まで指示してきた。

幼い頃は良かった。

皆同じようだと思っていたから。

だけど学校と言う集団生活を学ぶ場所で、俺は知った。

俺だけが、特殊だったのだと。





グラウンドでクラスメイトが楽しそうにやっていた、サッカーやドッジボール。

楽しそうで、混ぜてくれと頼んだことがある。





『……ごめんね。桐生くん。
ママに言われているんだ。

桐生くんを、遊びに誘わないでって』





あの男がクラスメイトの親にそう言っているのだと、後日知った。

…信じられなかった。








< 110 / 178 >

この作品をシェア

pagetop