結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

『成加は俺が嫌いで逃げたワケじゃなかったんだよ。彼女はあの画家の卵に脅されていたんだ。自分を捨てたら何をするか分からないって』


成加さんは画家の卵の男に以前から暴力を受けていて、出来るものなら彼と別れたいと思っていた。そんな時、司さんと出会い、本気で司さんが好きになった。


だからその男とキッパリ縁を切ろうとしたんだけど、男は激怒し、他の男と結婚するならソイツを殺してやると脅され、司さんに迷惑を掛けられないと思った成加さんは男に言われるまま駆け落ちした。


司さんが連れ戻しに来た時もその男が隣の部屋に居て、成加さんを見張っていたから本当の事が言えなかったそうだ。


1年後、その男は他に貢いでくれる年上の女を見つけ、呆気なく成加さんの元を去って行った。成加さんはまだ司さんが好きだったけど、あんな酷い仕打ちをしておいて、自分から連絡なんて出来ないと思っていたらしい。


『成加は、いつか俺から連絡があるんじゃないかって、携帯の番号は変えずにいてくれたんだ』

「司さんを待ってたって事?」

『あぁ、だから、ごめん。成加を迎えに行く』


私はスマホを耳から離し、小さなため息を付いた。


「謝る事なんてないよ。私達の契約は、どちらかの恋が実れば成立しないからね。ずっと想い続けてきた人じゃない。成加さんを迎えに行ってあげて」


精一杯、明るい声でそう言うと、司さんの返事を聞く前に電話を切った。


また振られちゃった……婚約破棄はこれで3回目だ。ここまで不幸だと笑えてくる。私の人生って、いったいなんなの?こうやって振られる為に私は生きてるの?


もう、何もかもイヤになってきた……


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